【おさらいリーガル知識】偽装請負とは?
知らなかったでは済まされないけれど、とっつきにくくて実はよくわかっていない・・・
法律関連用語は難しい表現が多くて苦手という方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは人材活用や労働者にまつわるさまざまな法律知識や用語をわかりやすく説明します。
知識のおさらいにお役立てください。
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1.偽装請負とは
偽装請負とは書類上、形式的には請負(委託)契約だが、実態としては労働者派遣であるもののことを言い、これは違法です。
請負と労働者派遣の違いは何か、偽装請負とは具体的にどういう状態を指すのか、厚生労働省 東京労働局のサイトには以下のように書かれています。
■請負と労働者派遣の違い
請負とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法)で、派遣との違いは、発注者と受託者の労働者との間に指揮命令関係が生じないということがポイントです。
偽装請負の状態になると、労働者派遣法等に定められた派遣元(受託者)、派遣先(発注者)のさまざまな責任が曖昧になり、労働者の雇用や安全衛生面など基本的な労働条件が十分に確保されないということが起き得ます。
■偽装請負のパターン
偽装請負となるパターンには以下のようなものがあります。
代表型 |
請負といいながら、発注者が業務の細かい指示を労働者に出したり、出退勤など勤務時間の管理を行ったりしているもの |
形式だけ責任者型 |
現場には形式的に責任者を置いているものの、その責任者は、発注者の指示を個々の労働者に伝えるだけで、発注者が指示をしているのと実態は同じであるもの |
使用者不明型 |
委託元であるA社がB社に仕事を発注したが、B社は別のC社に請けた仕事をそのまま出しており、C社に雇用されている労働者がA社の現場に行って、A社やB社の指示によって仕事をしている、と誰に雇われているのかよく分からないというもの |
一人請負型 |
実態として業者Aから業者Bで働くように労働者を斡旋、ところがBはその労働者と労働契約は結ばず、個人事業主として請負契約を結び業務の指示、命令をして働かせるようなもの |
■罰則
偽装請負と判断された場合の罰則は、違反条項によりますが指導、勧告、公表の対象となり得ます。公表の対象は労働力を受け入れていた発注者側にも及びます。また場合によっては、労働契約申込みみなし制度の適用を受けるなど、その他の影響が生じる可能性もあります。
2.偽装請負にあたらないかを判断する基準
偽装請負にあたらないかを判断する基準として、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年4月17日労働省告示第37号)があります。
詳細は厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」で確認できますが、文字の通り、労働者派遣事業と請負の事業の区分基準を明確にしたものです。
労働者派遣、請負のいずれに該当するかは、契約形式(契約書の名称・名目)ではなく、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準に基づき、実態に即して判断されます。
■労働者派遣と請負の区分がなぜ必要性なのか?
労働者派遣と請負とでは、労働者の安全衛生の確保、労働時間管理等に関して、雇用主(派遣元事業主、請負事業者)、派遣先、注文主が負うべき責任がそれぞれ違います。このため、業務の遂行方法について労働者派遣か請負かを明確にし、それに応じた安全衛生対策や労働時間管理の適正化を図ることが必要です。
業務委託(準委任)という名称で契約が締結される場合がありますが、準委任とは法律行為以外の行為を委託するものであり、請負のように仕事の完成を目的とするものではありません。
しかしながら、業務の処理を相手方から受託し、自己の裁量と責任において処理するものであることから、業務委託契約も偽装請負(派遣と請負の区分)の対象範囲と認識する必要があります。
■これは偽装請負にあたる?
これは偽装請負となってしまうのか?厚生労働省が公開しているQAをいくつかご紹介します。
1.発注者が請負労働者と日常的な会話をしても偽装請負になる?
業務に関係のない日常的な会話は指揮命令を行ったことにはならないので、偽装請負にはあたりません。
2.欠陥製品が発生し請負事業主の作業工程に問題があることがわかったので作業工程の見直しや欠陥商品を製作し直すことを要求することは偽装請負になる?
発注に関わる要求や注文は、業務請負契約の当事者間で行われるものであって発注者から請負労働者への直接の指揮命令ではないので労働者派遣には該当せず偽装請負にはあたりません。
ただし、発注者が直接、請負労働者に作業工程の変更を指示したり、欠陥商品の再製作を指示したりした場合は、直接の指揮命令に該当することから偽装請負と判断されることになります。
3.発注者から大量の注文があり、請負労働者だけでは処理できないときに、発注者の労働者が請負事業主の作業場で作業の応援を行った場合、偽装請負になる?
従来の契約の一部解除や変更によって、請負事業主で処理しなくなった業務を発注者が自ら行うこととなった場合等は特に違法ではありませんが、発注者の労働者が、請負事業主の指揮命令の下、請負事業主の請け負った業務を行った場合は、発注者が派遣元事業主、請負事業主が派遣先となる労働者派遣に該当します。労働者派遣法に基づき適正に行われていない限りは違法となります。
3.まとめ
実際の現場では業務を進めるために色々なことが起きます。その中で偽装請負になっていないかを定期的にチェックしていくことが必要です。違法状態を放置してしまった場合、各ステークフォルダーに影響を及ぼし大きな毀損が生じます。
とはいえこれらの点検をきちんと行っていくには専門知識だけでなく、ポイントを抑えた運用やそれらを実現する体制が必要です。
当社ではこのような知識をしっかり踏まえ、適正に業務をお引き受けします。請負についてのお困りごとがありましたらまずはお気軽にご相談ください。