戦略実践型の人事部。採用トレンドやツール導入前に考えるべきこと。
労働人口の減少やテクノロジーによる生産性の向上で、1人の人材のパフォーマンスが企業活動に与える影響は、ますます大きくなっています。
そのような状況のなか、今の人事部には「戦略人事」としての役割が強く求められてきています。従来の給与支払いや勤怠管理など、人事面の制度を運用する役割から、人材を活用し、経営目標を達成するための戦略を実行する役割への変化です。
背景には、優秀な人材が企業に求めるもの、仕事に対する価値観の変化があります。採用トレンドや人材管理ツールを導入する前に、この変化を正しく捉え、「なぜ行うのか」を明確にすることが大切です。
人事部が変化できない企業は生き残れない
人事部の役割変化が叫ばれる背景には、キャリアの多様化、人材の流動化、また、そもそもの就職に対する意識の変化などがあります。たとえば採用面では、入社後担当する業務をしっかり提示するまで内定を受諾しない学生が増えました。キャリア採用でも、特にエンジニアに顕著ですが、原則リモートワーク勤務や副業前提でないと検討すらされない現状があります。
これらに対応するには、職務内容や評価を明確にする「ジョブ型雇用」の考え方が必要になってきます。経営戦略に沿ってジョブを定義し、人事制度を変える、または極力矛盾が生じないよう、現行制度と併走させなければなりません。
一例ではありますが、これが経営者のパートナーとしての、人事部の役割です。人材の価値観の変化に伴い、人事は「戦力確保」「環境整備」の面から経営のかじ取りを行い、経営戦略と戦術を着実に遂行することを求められています。もはや正確にオペレーションを回すだけでは、役割を果たせません。
このような変化に対応せず、内外に従来通りの“自社の魅力”を発信しつづけても、優秀な人材から選ばれることはありません。重要なのは、自社が求める人材が、職場や仕事内容に求めている条件を見極め、戦略的に環境を整えることです。できなければ、先に環境を整えた他社に人材を奪われることになります。「人材を獲得する」考え方から、「人材から選ばれる」ために自社を変える、発想の転換が必要です。現在採用トレンドとなっているリファラル採用、ソーシャルリクルーティングや、人材管理にテクノロジーを活用するHRテックは、この目的と相性がよく、企業への導入が進んでいます。
採用トレンドは取り入れるべきか
自社が求める人材がはっきり決まっていれば、採用活動に有効な手法やツールは多く存在します。採用トレンドとしてよく取り上げられるのは、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、ソーシャルリクルーティングなど。またオンライン面接・Web説明会も当たり前に広がってきました。
様々ある手法の中でどれが有効かは、企業によって、求める人材によって変わります。うまくはまらず、成果の出ない手法もあるでしょう。しかし、戦略人事を行う上で、採用トレンドはできるだけ取り入れておく必要があります。自社が求める優秀な人材は、これらの手法を使う他社からの情報に触れているためです。
たとえば、SNSを使うソーシャルリクルーティングでは、採用に関する情報だけではなく、実際に働く社員の姿や職場の雰囲気を、企業が自由に発信できます。このような情報は、転職潜在層へのアプローチが可能で、かつ自然です。何度も触れるうちに、仕事内容への理解も深まり、交流も生まれやすくなります。企業理念への共感も得やすく、転職を考えるころには相互理解が深まっている状態となります。
このような状態にある情報感度が高い人材に、雇用条件を羅列しただけのDMや、十把一絡げのターゲティング広告を打ち出すと、拒否感を抱かれ逆効果になってしまいます。
自社が求める人材を定義し、自社の都合で獲得に動くだけでは不十分です。採用対象者の視点で俯瞰すること、求める人材が何を期待し、どのような情報に触れているのかを詳しく知る必要があります。その上で、選ばれる企業になるための戦略、具体的な手法の検討に入ります。採用トレンドを取り入れる意味はここにあります。
ツールも変化。ただしHRテックの導入は、目的をはっきり
採用活動に加え、働き手のパフォーマンスを上げる取り組み、またリテンション施策(流出防止策)も人事における重要な役割のひとつです。この分野でバズワードのように使われ、一気に広がったのがHRテック(HRテクノロジー)です。
HRテックは、AIやビッグデータを活用した高精度で効率的な人材活用・管理や、生産性向上などを目的としたテクノロジーの総称です。対応する製品として、社員の経験やスキルなどの人事情報をデータ化して管理できる「タレントマネジメントシステム」、モチベーションや仕事への貢献意欲を可視化できる「エンゲージメントツール」などがあり、企業へ導入が進んでいます。
これらのツールは、人材配置やコミュニケーションのタイミングなど、従来は上司の勘や経験に頼っていた内容を、介入後の結果まで含めて可視化できます。スコアを現状分析や目標設定にうまく使えば、人材管理・育成に非常に有効なツールとなります。
しかし、導入時に適切な課題設定がなければ、優れたツールもミスマッチなものになります。これは、「経営者が独断で導入を決定し、運用は担当者まかせ」「システムで何ができるのか現場が理解しないまま導入」という状況で起こりがちです。まずは、自社が抱える人事(経営)の課題は何か?をはっきりさせることが重要です。そのために、経営者は現場の意向を聞き、担当者は導入の狙いを理解すること。その上で、必要なツールの導入と運用方法を考えていきます。
いつの時代、どんな企業でも、ずっと変わらない“正しい”人事制度や手法は存在しません。外部リソースや新しい手法・ツールを活用しながら、常に試行錯誤を繰り返し、戦略をもって変化していくことが求められています。
まとめ
採用業務繁忙期は、採用担当者様がオペレーション業務に忙殺され本来すべき業務が実施できず、分析・企画業務などコア業務に専念できない、という企業様が多くいらっしゃいます。
また並行して多様化する採用チャンネルやツールの導入を進めることは容易なことではないでしょう。
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