BPOとは?対象業務や導入のポイント、アウトソーシングとの違いを解説
人材不足や労働環境の変化で、BPOを導入する企業が増えています。BPOは業務プロセスの一部または全体をアウトソースする経営手法で、単純な外注化とは異なり、業務改善の一環として行う点に特徴があります。うまく活用できれば業務効率化やコスト削減が一気に進み、事業の大きな成長が見込めます。
本記事では、BPOのメリット・デメリットや導入のポイント、具体的にどのような業務が対象になるのかを解説します。
目次[非表示]
- 1.BPOとは
- 2.BPOとアウトソーシングの違い
- 3.BPOの対象となる業務一覧
- 4.BPOのメリット・デメリット
- 4.1.業務効率化、標準化、品質向上
- 4.2.コア業務への集中
- 4.3.専門業者のノウハウを活用
- 4.4.コスト削減
- 5.BPOのデメリット・注意すべきポイント
- 5.1.自社にノウハウが蓄積されない
- 5.2.運用開始・終了に時間と手間がかかる
- 5.3.セキュリティ・情報漏洩の問題
- 6.BPOの進め方と導入時のポイント
- 6.1.BPOは業務改善の一環
- 6.2.コスト削減のみを目的にしない
- 7.BPOの活用で経営力の強化を
BPOとは
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、業務の一部または全体を外部に委託する手法です。名前に“プロセス”とあるとおり、業務の流れや仕組み全体をアウトソースするもので、単に作業の一部を任せたり、短期で外部人材を登用したりするものはBPOとは呼ばれません。長期間継続する効率的な業務プロセスを確立するために行う、「業務改善」の一環であることが、BPOの特徴であり本質です。
BPOとアウトソーシングの違い
BPOはアウトソーシングの一種であり、「外部の経営資源を活用する」という意味では両者ともやっていることは同じです。違いは主目的にあり、BPOには「業務改善」の視点が入ります。自社でできることをそのまま外部に置き換えるのではなく、業務課題の分析、業務プロセス全体の設計・見直しを行い、全体の効率化や品質の向上を目指します。
そのためBPOでは、対象業務に専門性を持つ企業へ長期にわたって外部委託を行うことが多く、経営戦略を共有するパートナーとしての意味合いがより強くなります。
BPOの対象となる業務一覧
BPOの対象業務は、依頼側企業の業態とBPOサービス企業の専門性によって変わり、様々な形態があります。基本的にはノンコア業務を委託することが多くなりますが、BPOサービスの提供形態も多様化しており、経営企画やその他の事業収益に直結する業務なども対象になり得ます。
ここでは比較的事業者の多いBPO対象業務を紹介します。
BPOの対象となる業務
- 受付業務
- 採用業務
- 経理業務
- コールセンター
- マーケティング
受付業務
企業の顔となる受付は、基本的な来客対応に加えマナーや細やかな気遣いが求められる業務です。品質を高く保つためには、マニュアルの整備や研修などに相応の負担がかかります。また、会社の規模が大きくなるほど、安定運営には専属チームが必要となります。
受付業務は比較的他の業務から独立しているためBPOへシフトしやすく、人材採用から研修、シフト体制の構築まですべて任せることができます。
採用業務
採用に関わる業務はBPOと相性がよく、募集、書類選考、採用面接など、必要な場面でサービスを利用できます。たとえば募集段階では、転職サイトなどの媒体選定、価格交渉、原稿作成や期間の設定など。選考段階では、エントリー書類のスクリーニングから、求職者との日程調整、場合によっては面接や合否まで任せることも可能です。恒常的なBPOのほか、転職フェアなどイベント時期のみの委託もできます。
経理業務
経理はアウトソーシングが進んでいる分野で、記帳代行や社会保険関連、給与・経費精算、決算業務などが以前からよく利用されています。ただ、従来のアウトソーサーへの依頼では、それぞれに管理が必要となり、修正が発生した場合の処理が煩雑になりがちでした。経理のBPOサービスでは、これらをまとめて代行でき、より高度な連結決算や、債券・債務管理などの財務関連業務にも対応できるところが増えています。
コールセンター
顧客ニーズの細分化、チャネルの多様化などにより、企業の問い合わせ対応の負担は増え続けています。また、人手不足に加え機材の設置やメンテナンスにかかるコストも上昇傾向で、自社でコールセンターの維持に必要なリソースの確保が難しいという声も聞かれます。このような状況により、旧来のコールセンター部門のアウトソーシングから、AIによるチャットボットや各SNS対応を含む「カスタマーケア」としてBPOサービスが利用されるようになりました。通話記録やチャットデータからの解析など、マーケティングとしても活用されています。
マーケティング
DMやカタログ制作などの従来の販促手法から、サイトや映像制作を含めたコンテンツプランニングまで、様々なマーケティングにBPOが活用されています。単に制作だけを行うのではなく、試行と解析を高頻度で繰り返し、精度を高めていくのがマーケティングにおけるBPOの特徴です。さらに現在では、SNSアカウントの運用代行やオンラインイベントの運営など、マルチチャネルに対応したサービスが展開されています。
BPOのメリット・デメリット
BPOには以下のようなメリットがあります。
BPOのメリット
- 業務効率化・標準化・品質向上
- コア業務への集中
- 専門業者のノウハウ活用
- コスト削減
業務効率化、標準化、品質向上
アウトソーシングとの違いでも述べたように、BPOには主目的として「業務改善」の視点が入ります。委託する対象業務だけではなく、全体の業務フローを見ながら効率化を図るため、業務の標準化やスピードアップ、品質向上の恩恵は事業全体に及びます。
コア業務への集中
ノンコア業務を外部へ委託することで、社内リソースをコア業務に集中できます。また、新規事業立ち上げにもBPOによってできた余力をあてることができるため、ネックになりやすい「人的リソース不足」にも対応しやすくなります。
専門業者のノウハウを活用
BPOサービス提供者は、対象の業務分野に専門性を持っています。また、法制度の変更やテクノロジーの利用など、最新の情報が必要になる変化への対応にも積極的です。これらの自社にないスキルやノウハウを活用できることは、BPOの大きなメリットです。
コスト削減
BPOによる業務改善の結果、全体でコストが削減できます。自社で抱えていた人的・物的リソースを、固定費から変動費にできることも大きなメリットです。
BPOのデメリット・注意すべきポイント
BPOにはデメリットもありますが、導入前に注意すべきポイントを押さえておけば、一定の対策が可能です。
自社にノウハウが蓄積されない
BPOは業務プロセスを丸ごと委託するため、通常社内でのノウハウ蓄積は難しくなります。業務分野によっては、密な打ち合わせやレポートなどである程度のフォローは可能ですが、作業や進捗などは委託先が取り仕切るため、細かなナレッジの共有はされません。
ただ、企業活動をすべて自社リソースで行うのは現実的ではなく、すでにノウハウが蓄積されていない業務は多くあるはずです。BPOも同様で、事前にコア業務・ノンコア業務について議論を尽くし、自社に必要な業務ノウハウは何かをはっきりさせてから導入することが重要です。
運用開始・終了に時間と手間がかかる
BPO導入には業務内容や組織の変更が必要で、多くの場合で大がかりなプロジェクトになります。また、BPOから内製に戻す際には、導入と同じかそれ以上の手間と時間がかかります。一時的な業務品質の低下も許容する必要があります。
BPO導入検討の際に、会社の長期的な展望に基づいて対象業務を決めることが重要です。
セキュリティ・情報漏洩の問題
BPOの対象業務によっては、企業の財務情報や顧客情報を共有する場合があります。他社から機密情報の漏洩が発生するリスクがあることは、BPOのデメリットと言えます。しかし、漏洩リスクは自社で業務を行う場合も同じです。BPOでは双方で運営体制を確認し、セキュリティ環境を構築していくことが重要です。
ITによるシステム化が前提のBPOの場合は、ほとんどの委託先が高度なセキュリティを備えており、むしろメリットとなります。
BPOの進め方と導入時のポイント
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)はアウトソーシングの一種ではありますが、外部委託という枠組みだけでは本質を表せません。本質は、業務改善の手段のひとつであるという部分にあります。
そのためBPOの導入時には、業務改善の進め方に沿ってプロジェクト設計を行います。
業務改善の進め方5ステップ
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参考:業務改善の具体的な進め方についてはこちらの記事から
→業務改善の進め方と事例を紹介 成功のポイントや使えるフレームワークも
また、BPO導入時のポイントは以下の2点です。
BPO導入時のポイント
- 業務改善の一環として行う
- コスト削減のみを目的にしない
それぞれ説明します。
BPOは業務改善の一環
BPO導入前にまずは会社全体の現状分析を行い、課題を整理します。その上で、整理した課題の優先順位付けと、改善することで会社をどのように変えるのか、ゴールを明確にします。アウトソースする業務の範囲や、具体的な実行手段を検討するのはその後です。
最初からBPOありきでプロジェクトを進めてしまうと、「どの業務をアウトソースするか」という議論になりやすく、部分的な外注に帰着する可能性が高くなります。業務改善が進まず、無駄な業務が含まれたままBPOを導入しても十分な成果は得られません。
BPOは「業務改善の一環」という視点を持って、プロジェクトを進めましょう。
コスト削減のみを目的にしない
コスト削減はBPOの大きなメリットですが、最初から主目的としてプロジェクトを進めてしまうと、単純作業のアウトソーシングになりがちです。議論が部分最適の視点になりやすいためです。
BPOの目的は業務改善と、それによる企業の課題解決です。コスト削減はあくまでも業務改善の効果のひとつでしかありません。コスト削減のみを目的とせず、会社全体の現状と将来のビジョンを明確にして、経営リソースを最適化できるBPOを見極めましょう。
BPOの活用で経営力の強化を
これまで述べてきたように、BPOは企業全体の業務改善を目的とした手法のひとつです。単純な外注とは違い、導入前には業務プロセスの可視化や課題整理、将来のビジョンを見据えたゴール設定が必要になります。もちろんこれらは大変な作業ですが、見方を変えれば、BPO導入に向けた活動自体が企業をより強くするとも言えます。
BPOサービス提供企業には、こうした業務改善のコンサルティングを含めてプロジェクトを組むところもあります。業務改善には客観的な視点が不可欠です。早い段階から彼らと協力し、外部の視点で自社業務の見直しや改善提案を受けることは、BPOの導入効果をさらに高める有用な手段となり得るでしょう。