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自律型人材が育ち、定着する組織とは?次世代型組織についても解説

コロナ禍による働き方の変化や AI の進化、また国際紛争の激化など、現代の企業を取り巻
く環境は大きく変化しています。このような時代に企業が成長を続けるには、環境の変化に
迅速かつ柔軟に対応していく経営と、それに合わせた組織の構築が不可欠です。この文脈で
注目されているのが、自己決定力を持ち、自身の行動を自律的に管理しながら業務を遂行で
きる「自律型人材」です。

自律型人材は、細かな指示を待たずに自分の意思で判断し行動できるため、変化が速く不確
実性の高い「VUCA」の時代に適合する人材として重要視されています。加えて、テレワー
クの浸透で従来の管理方法が困難になったことも、さらに需要が高まる要因となっていま
す。

本記事では、自律型人材の特徴や育成・定着のポイントを解説、また、自律型人材を前提と
した次世代型組織についても紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.自律型人材とは
  2. 2.自律型人材の育成・定着に必要な要素
    1. 2.1.心理的安全性が確保されている
    2. 2.2.ビジョンが組織に深く浸透している
  3. 3.自律型人材が活躍できる組織例
    1. 3.1.ティール組織
    2. 3.2.ホラクラシー組織
  4. 4.まとめ

自律型人材とは

自律型人材とは

自律型人材とは、仕事やタスクを自己管理し、自らの意思やビジョンに基づいて業務を遂行
できる人材のことです。もちろん好きなように仕事をするというわけではなく、会社の方向
性や求められている成果を理解したうえで目標を設定し、課題に取り組みます。

彼らは自らを律する行動規範を持っていて、自身の能力もよく理解しています。そのため、
上司からの細かな指示がなくても、大意を読み取って成果につなげる動きができます。新た
なスキルや知識を獲得することにも積極的で、また、自分の力が及ばない領域では周囲の力
を借りることにも躊躇はありません。自分の仕事に責任を持ちながらも、定めた目標を達成
するために他者の協力を得る柔軟性も持ち合わせています。

自律型人材の育成・定着に必要な要素

自律型人材の育成・定着に必要な要素

自律型人材は自分でタスクを管理し問題を解決する能力を持っています。また、創造性や革
新性を大切にしており、新しいアイデアやアプローチを試すことを好みます。

これらの特徴は従来の管理型組織とはあまり馴染まず、特に従業員に対して細かな指示と
監視を行うマイクロマネジメントとは決定的に合いません。そのため、社内に自律型人材を
増やし、育て、定着させるためには、経営者やマネジメント層、そして従業員が、上記の管
理型組織の意識から抜け出す必要があります。

自律型人材が活躍できる組織には、以下のような特徴があります。

心理的安全性が確保されている

心理的安全性は、組織行動学を研究するエイミー・C・エドモンドソンが 1999 年に提唱し
た心理学用語です。後に Google が行ったチームパフォーマンスを分析するプロジェクトに
おいて、「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要」と結論づけられたため、企業
の間で急速に広まりました。

心理的安全性が確保されている職場とは、「対人関係のリスクを取っても安全だと信じられ
る職場環境」のことです。このような職場では、誰に対しても質問や提案を行うことが許さ
れており、皆が気兼ねなく意見を交わします。そのため個々人のスキルや創造性を発揮しや
すく、チーム全体に活気が生まれます。また、責任の押し付け合いなどがないため、ミスが
起こったときも発見が早く、全員で解決に向けて素早く協力できます。結果として全体の生
産性が向上し、さらに従業員は過度に失敗を恐れることなく挑戦できるため、新たなビジネ
スチャンスをつかむ機会も多くなります。

逆に、思っていることを口に出すと否定されたり叱られたりする可能性がある環境では、人
は本音を話せません。これは職場の心理的安全性が低い状態です。提唱者のエドモンドソン
によると、心理的安全性が低いときには以下の不安が起こるとされています。

  1. 無知だと思われる不安
  2. 無能だと思われる不安
  3. 邪魔をしていると思われる不安
  4. ネガティブだと思われる不安

このような不安があると、従業員は本音を隠すようになります。

管理型組織でしばしば見られる「報告すればタイミングや細部の不手際を責められる」「営
業会議が叱責の場になっている」などのような環境は、心理的安全性が低い状態です。この
状態では従業員が発言することを諦めてしまい、建設的な意見や創造的なアイデアが出て
くる可能性は低くなります。

また、この環境に慣らされると、行動においても「言われたことだけをやる」のが平常とな
ってしまいます。さらに、自分の頭で考えることを放棄した(させられた)結果、言われた
ことも満足にできなくなっていきます。つまりこのような組織では、自律型人材の育成や定
着どころか真逆の人材を育ててしまう結果になるのです。

心理的安全性が確保された環境を保つためには、組織全体で相手を尊重しながら対等に自
分の要望や感情を表現する「アサーティブ・コミュニケーション」が有効です。まず経営者
やマネジメント層が習得し、1on1 ミーティングなどで実践していくとよいでしょう。

※心理的安全性についてはエイミー・C・エドモンドソン著「恐れのない組織」(英治出版)に詳述されています。

ビジョンが組織に深く浸透している

自律型人材が自発的に行動するのは内発的動機を持っているからです。そして動機を生み
出す元となるのは、実現したい未来である「ビジョン」です。ビジョンには従業員個人が持
つ「個人ビジョン」と、企業で共有される「共有ビジョン」があり、これらの重なる部分が
多いほどやる気や情熱につながり、周囲とも協力しながら目標に向かって突き進むことが
できます。

自律型人材は、これら個人ビジョンと共有ビジョンのすり合わせができています。どちらの
ビジョンにも深い理解と共感があり、自身と企業の成長をリンクさせ、目標に向かって行動
することを楽しんでいるのです。

このビジョンがどちらもない、もしくは片方が欠けている場合は、組織に「自律型」と呼べ
る人材を増やすことは困難です。たとえば、企業に共有ビジョンがなく、個人ビジョンが「お
金を稼ぎたい」「出世したい」などの場合(これらの内容自体は本人の心からの願望であれ
ば問題ありません)、周りを蹴落としてでも自己の利益を最大化する自分勝手な人材になっ
てしまう可能性が高くなります。逆に企業の共有ビジョンには共感しているものの、個人ビ
ジョンがそれほど強くない場合は、自発的に行動する力が弱く「言われたことだけやる社員」
となります。自発的に行動できること、企業の方針に沿って行動できること、どちらか一方
では自律型人材とは言えないのです。

しかし、現実には確固たる個人ビジョンを持った人材ばかりではありませんし、企業にも共
感できる共有ビジョンが必ずあるとは限りません。そのため、社内に自律型人材を増やすた
めには、次の 3 ステップが必要になります。

  1. 個人ビジョンを引き出す
  2. 共感できる共有ビジョンを作る
  3. ビジョンを浸透させる

これらの実行は、一人ひとりへのヒアリングやコーチング、ワークショップなどが必要とな
り、手間も時間もかかります。しかし、人が長期にわたって情熱を持ち主体的に行動するに
は、強い動機となるビジョンは不可欠です。自律型人材が育ち活躍する組織にするために、
皆が共感できるビジョンの作成と浸透を心がけましょう。

自律型人材が活躍できる組織例

自律型人材が活躍できる組織例

自律型人材は従来の管理型・階層型の組織でもうまく立ち回ることができますが、彼らをさ
らに活かせるのは、より柔軟で開かれた構造を持つ組織です。特に「ティール組織」と「ホ
ラクラシー組織」は、自律型人材を前提としたような組織構造を持っており、次世代型組織
として注目されています。

ティール組織

ティール組織とは、権力を持つ管理者が存在せず、構成するメンバーの意思によって運営を
行う組織のことです※。組織を株主や社長のものではない 1 つの生命体と捉え、生命体で
ある組織の「進化する目的」を実現し続けるために、構成メンバー全員が主体的に意思決定
していくというスタイルを取ります。

このようなスタイルで運営するためには、必然的にメンバー全員が組織の目的のために自
分が何をすべきかを深く理解して行動できる人材であることが求められます。また、フラッ
トな関係であるメンバーが協力して活動するため、階層的構造を持つ組織とは違った仕組
みやルールが必要になります。

ティール組織ではこのスタイルを実現するために、メンバー全員の信頼を基盤として、業務
プロセスや給与などの公開、人事プロセスの明確化など、情報の透明化と権限の分散を行っ
ています。これらにより、管理する・される業務をなくし、メンバーが組織の目的実現(社
会への価値提供)に集中して能力を発揮できる環境を維持しているのです。

※ティール組織では社長などの役職を残すこともありますが、その場合は権力が組織に影響しないよう工夫が施されます。
​​​​​​​詳細はフレデリック・ラルー著「ティール組織」(英治出版:原版は Reinventing Organizations)を参照。

ホラクラシー組織

ホラクラシー組織は、ティール組織の形態の一つで、社長や役員などの役職・階級を完全に
なくした組織形態です。特定の人物による組織の所有物化や権力の集中が起こらないよう、
権限の分散が図られています。

その代わり従来のヒエラルキー型組織にはない特徴として、階級の概念がない「ロール(役
割)」の設定があります。ロールとは組織の目的実現に必要な特定の業務を集めたもので、
例えば、組織の方向性・優先順位の見極めやメンバーのロール配置などを行う「リードリン
ク」、ミーティングの司会進行や全体の活動が共通ルールに則っているかをチェックする
「ファシリテーター」などがあります。ロールの増減や権限範囲は自由に決めることができ、
組織に必要であれば「営業」「マーケティング」「ファイナンス」などが追加されます。

ホラクラシー組織では組織の目的実現のために行われるミーティングを「ガバナンスミー
ティング」と呼び、ロールの新規設定や変更もここで話し合われます。その際の議題はメン
バーから寄せられる「テンション」が元になります。テンションとは各メンバーが感じてい
る理想と現実の“ひずみ”のことで、組織の課題のほか、個人的に気になっていることや不安
に思うことなども含まれているのが特徴です。

ホラクラシー組織ではこのテンションに寄り添うことが約束事として決められているため、
メンバーは安心して声を上げることができ、さらにその声が循環することで組織が進化し
ていくという構造になっています。このような仕組みを持つことで、メンバー全員が互いに
寄り添う信頼関係を築き、主体性を強化して組織の目的実現に集中できる環境を維持して
いるのです。

まとめ

まとめ

社内に自律型人材が増えると、管理職の負担が減る、コア業務に集中できるなどのメリット
があり、業務効率化につながります。また、挑戦を是とする風土ができることで創造的アイ
デアが生まれやすく、生産性の向上や新たなビジネスへの参入も可能になります。

自律型人材の育成や組織変革は簡単なことではありませんが、これからの企業が生き残る
ためには、組織内の個人が主体的に動き、環境の変化に素早く対応できる体制の構築は不可
欠です。自律型人材が育ち、活躍できる環境を整えて、企業の成長につなげていきましょう。


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